ロードバイクタイヤの乗り味など性能に関するスペックについて調べてみた
ロードバイクに乗ってはや10年以上。
もはや何年乗っているかわかりません。そんな中でも未だに良く分かっていないタイヤのスペック。これについて浅くですが調べてみましたので、お暇な方は超絶長文を覚悟の上、文末を「のようだ」に補完してお読みください。
ざっくりタイヤ遍歴について
実はずっとロードバイクのタイヤはミシュランを気に入って使っていたのですが、特に良かったPOWER ROADという商品が品薄で手に入らなくなってしまった時があり、そのタイミングでChallengeというメーカーに乗り換えました。
クロスバイクやグラベルは省いて本格的にロードバイクに乗り始めたところからざっくり書いていくと、
ミシュラン Lithion2(リチオン2)→Pro4→Pro3→クリリオン2→コンチネンタルGP4000S2→POWER ROAD→Lithion3→Challenge ELITE XP→コンチネンタルGP5000→Challege STRADA Pro
といったタイヤ遍歴です。
個人的な感覚になってしまうのですが、現在の人気ナンバー1タイヤは恐らくコンチネンタルのGP5000なのではないかと思います。自転車を買ったばかりの友達に「タイヤはGP5000はいてるよ」と嬉しそうに言われたことがあって、GP5000の知名度に驚いたことがあります。もはや一強と言っても良いくらいのベストセラー万能タイヤではないかと思います。
しかし、色々なタイヤを試してきて全開でコーナーを攻めるような走りをしない私にはGP5000よりも他にも安価で好みなタイヤがあり、Challengeのタイヤに出会って改めてタイヤってどうやって選べば良いんだろう?と考えてみたので、タイヤのスペックを理解してその内容について整理したいと思いいたった訳です。
タイヤ選びに何をチェックする?コスパが高い隠れたタイヤ探し
まず一通り調べた&経験を踏まえて私の結論を言ってしまうと、乗り方によってはトップグレードである必要が無いということです。
当然安価なものは雨天時にグリップが利かなくなるなどあるようなのですが、それもタイヤのスペックをチェックすることによってかなり回避できるようになると考えています。
タイヤの性能を見る際に何をチェックしていけば良いのか、これで完璧とは言えませんがチェックすべき以下3点について掘り下げてご紹介していきます。
チェックすべきポイント
- コンパウンド:主にグリップ力と寿命
- ケーシングとTPI:主に乗り味、耐パンク性能、転がり性能
- 独自技術:オプション的な付加価値とポジショニング。耐パンク性能やグリップなど独自の特徴付け
主にグリップ性能と剛性に影響するコンパウンド
タイヤ選びをするのに気にするポイントはやっぱりグリップ力でしょう。
グリップ力に最も影響するのは、路面に直に接触するタイヤ表面、すなわちトレッドの材質になります。この材質のことをコンパウンドと言います。コンパウンドとは混合物を意味していて、まさにトレッド面の成分に何を混ぜ込んでいるかというお話です。
材質って言ったってそんなに変わらんだろ?と思っていたのですが、実際にグリップが利くタイヤと利かないタイヤはあって、その違いに大きく影響するのがこの材質なのです。これだけ様々な技術進化が起きても材質に依存しているのは非常に原始的で、ただだからこそ価格に直に影響が出るというのは想像ができます。
では、このコンパウンド、果たして何を見たら良いか・・・ということなのですが、実はこれはメーカー独自のレシピのようで数字では公開されていません。そのため、あくまで限られた情報の中で配合されている材料と比率を推測をすることになります。
コンパウンドを形成する要素
コンパウンドを形成する要素ですが、これまた大きく3つあります。
| レイヤー | 概要 | 主な構成要素 |
|---|---|---|
| ① ゴム(ベースポリマー) | 基本となる弾性体。天然ゴム or 合成ゴム or 両者の混合 | NR(天然ゴム)、SBR、BR、EPDMなど |
| ② フィラー(補強剤) | 機械的強度(引張、曲げ、衝撃など)・グリップ・転がり・熱伝導などをコントロール | カーボンブラック(CB)、シリカ(Si)、グラフェン(G)など |
| ③ 添加剤(アジャスター) | 性能の微調整。耐久性、柔軟性、紫外線耐性などを強化 | 軟化剤(オイル・樹脂)、酸化防止剤、老化防止剤など |
選ぶ際の優先順位としては、フィラー→添加剤→ベースゴムになります。
ひとつずつ説明していきます。
ゴム(ベースポリマー)
タイヤはゴムで出来ていますが、まさにベースになるゴムです。
天然ゴム、合成ゴム、特殊ポリマーがあり、ゴムの特性は以下のようになっています。
| 種類 | 特徴 | 用途・傾向 |
|---|---|---|
| 天然ゴム(NR) | しなやかでグリップに優れるが、紫外線・熱・酸化にやや弱い | クラシック系、スレッド感ある乗り味を重視するタイヤに多い(例:Challenge, Vittoria一部) |
| 合成ゴム(SBR・BRなど) | 耐久性や安定性が高く、大量生産に適している | 現代の主流。レース・トレーニングタイヤともに広く使用(例:Michelin, Continental) |
| 特殊ポリマー(TPI向け設計など) | 高TPIケーシングと相性良く設計され、コンパウンド性能を補完 | しなやかで反応性の高い乗り味を狙うハイエンドモデルに多い(例:Vittoria Grapheneシリーズ) |
ただし、先にも記載した通り、あまり気にする部分ではありません。気にしなくて良い理由は後のフィラーと添加剤で説明します。
フィラー
これが非常に重要で.タイヤの性能を大きく決めます。
ベースポリマー(ゴム)にこのフィラーを10〜50%くらいの割合で混ぜるので、ベースポリマーよりもフィラーの特性がタイヤの特性として色濃く出ます。
フィラーは3つあり、カーボンブラック(CB)、シリカ(Si)、グラフェン(G)になるのですが、端的に特徴をまとめると以下の通りです。
| フィラー | 主な特徴 | メリット | デメリット | 主な用途・傾向 |
|---|---|---|---|---|
| CB(カーボンブラック) | 伝統的な黒色フィラー。ドライ性能・剛性・耐摩耗性が高い | ・ドライグリップ良好 ・紫外線耐性あり ・コスト抑制 |
・転がり抵抗やや高い ・経年硬化しやすい |
耐久性重視の安価モデル(旧世代含む) |
| Si(シリカ) | 白色鉱物フィラー。ウェット性能・転がり抵抗に優れる | ・ウェットグリップ◎ ・低転がり抵抗 ・温度依存が少ない |
・高価 ・加工難度が高く、ポリマー制御が必要 |
現代の主流。ハイエンドから耐久系・オールラウンドに採用多数 |
| G(グラフェン) | 炭素の単層構造を持つナノ素材。万能性と耐久性に優れる | ・軽量かつ高剛性 ・摩耗耐性・熱耐性◎ ・性能バランスに優れる |
・非常に高価 ・均一分散が難しく製造コスト高 |
ヴィットリア等の最上級モデル。単独よりCBやSiとの複合が主流 |
もっと特徴を明確に言うと、、、
CB(カーボンブラック)は一言で言うと硬い!安い!!というのが特徴です。
硬いので、耐摩耗性と剛性が高く走行距離による消耗を抑え、且つコーナリング時の変形を抑えるなどを目的に剛性を上げるために使うことができます。その反面、グリップ性能はあまり高くなく特にウェットには弱いという特徴があります。温度変化や経年劣化にも弱いので長距離での消耗には強いものの経年劣化には弱いという特徴があります。
Si(シリカ)は一言で言うと柔らかい!というのが特徴です。
柔らかいのでグリップ力があり転がり抵抗も小さいということがあります。転がり抵抗は一見硬い方が有利なように思えますが、昨今のタイヤワイド化(タイヤが太くなっていった)の背景は空気圧が低くタイヤがある程度柔らかい方が細かい凹凸に対しても転がり抵抗が低いということが分かったからで(硬すぎても柔らかすぎてもダメ)、低圧が可能な太さへと変わっていった訳です。また、シリカのグリップはウェット時にも強いため、消耗が早いという以外はかなり万能です。温度による劣化などが少ないことも強みの一つです。
G(グラフェン)は一言で言うと高機能、高価!次世代混合物というのが特徴です。
何言ってるんだ?という感じですが、CBやSiはベースポリマーにそれぞれ単体で使うということもありますが、Gは単体で使うことがありません。Siと組み合わせて使うのが基本でSiのグリップの良さは残しつつ、摩耗耐性、高剛性にしてくれるとんでもないフィラーです。
フィラーの組み合わせとメーカーの独自性
フィラーはベースポリマーに対して単一で使うこともできますが、それぞれのデメリットをメリットで補うように組み合わせて使うのが一般的です。
具体的には組み合わせは以下のような内容です。
- CB単体=高剛性、ウェットに弱い
- Si単体=グリップはするけど消耗が速い
- CB+Si=高剛性で高グリップのタイヤ(配分によって特徴が偏る)
- Si+G=多くの点でハイレベルな高級タイヤ
実は、ベースポリマー自体も特徴はあるのですが、技術進化でベースポリマーのゴム自体はニュアンス程度で性能比較であれば影響はあまりないくらいになっており、このフィラーの配合の方がタイヤの特徴に大きく影響を与えています。例えばCB:Si=6:4くらいにすれば、剛性に重きを置いた設計になり、グリップは落ちるもののコーナーでもシャキッとした挙動になるため、ライダーによってはこちらの方が攻められるということもあります。これらの配分についてはメーカーの技術的な部分なので公開されていないことが殆どなので商品の紹介文から読み取って特徴を推測するしかありません。
そして更に面白いのは、これらの配合をベースポリマー全体に一律して使うのではなく部分的に使うことで更なる特徴を出す設計がなされているということです。
例えば、既に古いタイヤなのですが、MichelinはPro3やPro4ではタイヤのコンパウンドについて「DualCompound」というテクノロジーで紹介していました。文字通り「Dual=2つの」コンパウンドな訳ですが、何が2つかと言うと直進走行時にはグリップは必要ないため摩耗の少なく高剛性のCBを配合したゴムを使い、コーナリング時に地面に接するサイド部分にはSiを配合したゴムを使用することで、直進では耐摩耗性を高め、コーナーではしなやかに高グリップ力を生むというまさにDualなコンパウンドになっていました。
分かりやすい例にDual Compoundを上げましたが、このようにコンパウンドはフィラーの特徴、フィラーの組み合わせで特徴を出しながら、更にトレッドのどこに配置するかといった工夫をして各メーカーが優位性を出すことにしのぎを削っていた訳です。
面白いですよね。
添加剤(アジャスター)
タイヤの性能を大きく決めるのはフィラーなのですが、ゴムの機能の向上というよりは基本的な性能を補助・強化する目的で添加剤が加えられています。性能の変化というより、「つなぎ」のようなあくまで補助の役割が大きくタイヤ選びの際には特に意識しなくて良い情報です。以下に主要な添加剤を見れば気にしなくて良い理由もわかるかと思います。
製品の情報にそもそも公開されていないことが多いですが、もし公開されていても気にしなくて良いということですね。
| 添加剤の種類 | 主な目的 | 備考 |
|---|---|---|
| 加硫剤(硫黄など) | ゴムを「加硫」して強度や弾性を向上させる | タイヤの基本性能に不可欠 |
| 促進剤 | 加硫反応のスピードと効率を高める | 使用量は非常に少量 |
| 老化防止剤 | 紫外線・酸素・熱による劣化(ひび割れなど)を防ぐ | 使用されないと寿命が著しく短くなる |
| 軟化剤(オイルなど) | 柔軟性を持たせ、加工しやすくする | 転がり抵抗や耐候性に影響 |
| フィラー補助剤 | フィラーとの結合を助ける(特にシリカとの相性向上) | シランカップリング剤などが代表例 |
| 難燃剤/帯電防止剤 | 特殊な用途では導入される場合あり | 一般的な自転車タイヤでは稀 |
グリップを知りたい時の結論
ということで、これらの知識を踏まえた上でタイヤのグリップを知りたい場合は
- フィラーの配合はあくまで方向性のため、コンパウンドにメーカー独自のどの技術が使われているかを見る
- 紹介文を読み、フィラーの配合を見て剛性寄りかグリップ寄りか方向性を見る
とするのが良さそうです。
コンパウンド名を参考になるかもしれないので列挙します。
| メーカー | モデル名 | コンパウンド名 | 主成分構成(公開/推定) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Continental | Grand Prix 5000S TR | Black Chili | カーボンブラック主体 + シリカ少量(公開情報) | チューブレスレディ、高い耐久性と転がり性能のバランス |
| Vittoria | Corsa PRO TLR | Graphene + Silica Compound | シリカ + グラフェン混成(公開)、320 TPIコットンケーシング併記 | 高耐久&高グリップ、レース対応 |
| Michelin | Power Cup TLR | Gum-X Compound | シリカ主体 + 補助成分(推定)、グリップ・耐久性を両立 | 2025年レース向けモデル |
| Michelin | LITHION 4 | MAGI-X Compound | 樹脂名や分子組成、超高比率シリカ・強化カーボンブラックなど(推定)、MotoGP技術応用 | 前シリーズ比較でグリップ性能約9%向上、耐久性アップ。~32C展開。チューブドのみ |
| Schwalbe | Pro One TLE / Pro One TLR | PureGrip Compound | 非公開、CB+Si混成推定 | 高性能チューブレス対応タイヤ |
| Panaracer | Agilest TLR | ZSG (Zero Slip Grip) | 非公開、高性能配合(シリカ含有推定) | 軽量で耐パンク性に優れるオールラウンダー |
| Challenge | Elite XP | Smart Plus | シリカ主体+補強材(PPS等)推定 | 最新技術採用の高性能レースタイヤ |
ケーシングについて
いよいよケーシングです。
ロードバイクに乗り始めてタイヤ交換をしようと思った時、価格の違いが気になってサイトを見に行くとこんな画像に出会うことがあると思います。この章ではこのタイヤの内部のケーシングについて見ていきます。
引用:サイクルモード 安全&軽快に乗るための自転車タイヤ図鑑 タイヤ各部名称と基礎知識
コンパウンドでも剛性などの特徴がありましたが、コンパウンドはあくまで地面との接地面に関する特徴のため主にはグリップに大きく影響していました。しかし、直接地面に接触しないケーシングはグリップ以外の乗り味、耐パンク性能、転がり性能を主に担っています。
タイヤについて興味を持つと恐らく注目するのがこのケーシングで、多くの人がTPIに注目すると思います。自転車は軽量であることが注目されるので、タイヤも漏れなくまず重量の話になるのですが、それ以外に数値化されている情報というとこのTPIくらいしかないので機能比較する要素として目が行ってしまいますよね。そして、この「TPIの数字が大きいと高性能」という印象を持つのではないでしょうか。しかし、実際にこのケーシングやTPIがどう影響しているのかというのは、なかなか理解が難しいところだと思います。
とそんなケーシングを掘り下げて行く訳ですが、結論から先に言うとタイヤを選ぶ際のケーシングで参考にするポイントは「TPIと独自技術」の2点です。その他、諸々の情報を一通り説明していきますが、ポイントの2点を意識して読んで頂けると理解しやすいかと思います。
| ケーシングの主要要素とタイヤ選びで参考にするポイント | |
|---|---|
| 項目 | 概要 |
| TPI | TPI(Threads Per Inch)は繊維密度の指標。高TPIはしなやかで軽量、低TPIは頑丈で安定。 |
| 構造/素材の違い | ケーシングの層数の意味。乗り味と耐久性に影響。多層構造は安定性に貢献。 |
| 独自技術 | VectranやPPSなど、パンク対策や剛性向上を目的とした補強ベルトを採用する技術。 |
ケーシングとはタイヤの骨格
そもそもケーシングとは何かということですが、コンパウンド(ゴム)の内側に配置されているタイヤの構造を支える繊維層(骨組み)です。
といっても分かりにくいと思うので、人体で言う「骨」を想像して貰うと良いと思います。ケーシングが「骨」で、コンパウンドが「筋肉」や「皮膚」のイメージです。
骨は筋肉に覆われていてところどころ癒着してくっついています。このお陰で人体は人体の構造を維持しつづけることができます。
部分的に見ると体に圧力が加わっても骨で支えることができ、また引っ張ると筋肉の表面は皮膚と一緒にある程度は動きますがある一定のところから癒着した骨に止められて引っ張れなくなります。この構造がまさにケーシングとコンパウンドの関係です。
骨となるケーシングは、細いコシのある繊維を並べて薄い布のような構造になっていて、これにコンパウンドが練り込まれ周りを包み込んでいます。(実際の布とは違って交差して編み込んでるのではなく一方行に斜めに並べてある構造)
実際にタイヤは、チューブド(クリンチャー)やチューブレスに限らずタイヤの内側に空気を充填するのですが、もしここで骨の役割であるケーシングが無かったら形を維持できず膨らんでしまうし、また走行時に外圧がかかった際にも潰れて形を維持できなくなってしまいます。コーナリング時の横方向への摩擦に対しては形状が維持できずヨレてしまって非常に危険ですね。
このように、ケーシングには以下のような効果や役割があります。
- 空気圧を受け止めて形状を維持する(=構造材)
タイヤ内部からの空気圧に対してタイヤの膨張を一定に防ぎしてしまいますが、内圧に対して形を維持しています。
- 走行時の衝撃にしなやかに対応して快適性と追従性を確保
外圧に対してはタイヤ内部の空気がクッションになりますが、路面の凹凸やコーナリングのヨコへの摩擦はケーシングによってコントロール(味付け)されていて乗り味になり、路面追従性にも影響しています。
TPIってなに?
では、ケーシングはどのタイヤも同じなの?というと当然違います。その最も分かりやすい指標がTPIです。
TPIはThreds Per Inchの頭文字を取ったもので、1インチの中に織り込まれている繊維の数を表しています。
ざっくり言うと、TPIが大きいということは細い繊維を多く敷き詰めているということなのでしなやかになりますが繊維が細いので衝撃に弱く、TPIが小さいということは太い繊維を敷き詰めているので硬く衝撃に強いという特徴が出てきます。
これを表にするとこんな感じです。
| 観点 | 高TPI | 低TPI |
|---|---|---|
| 乗り心地 | しなやかで快適 | 硬くて安定感がある |
| 転がり抵抗 | 小さい(=速い) | やや大きい |
| パンク耐性 | やや低め | 高い |
| 重量 | 軽い | 重い |
| 値段 | 高価 | 安価 |
TPIが高い方が高性能という印象はあるかと思いますが、具体的にはしなやかさが増し、転がり抵抗と重量が小さくなる・・というところです。
しかし、このようにしなやかさと剛性がトレードオフのような関係性であることを理解することで、TPIが高いタイヤを妄信的に求めるのではなく、スポーツ、ロングライド、日常使いのように目的に応じて選ぶ材料にすることができる訳です。
素材の違い
当然、ケーシングはTPIだけではなく繊維の素材自体も使い分けて特徴の調整をしています。
代表的なのはナイロン、コットン、ポリエステルです。これは衣類に使われている素材なので想像がしやすいと思います。
| 素材 | 特徴 |
|---|---|
| ナイロン | 丈夫、重め、コスト安、汎用性あり |
| コットン | しなやか、軽量、高価、レース向き |
| ポリエステル | ナイロンとコットンの中間的特性 |
余談ですが、丈夫さを求めるとナイロン、柔軟さはポリエステルみたいな印象があったのですが、まさかタイヤにコットンというのは個人的には驚きでした(笑)
とはいえ、これらは選定の材料としては見る必要はない、もしくは見れないと思っています。
一般的なタイヤではナイロンやポリエステルをベースにした“混合構成”が主流です。
衣類と同じで、素材は強度・柔軟性・加工性のバランスを見て使い分けられており、メーカーがあえて明記しないことも少なくありません。
一方、Challengeのようなハンドメイドタイヤでは「コットン+320TPI」といった情報が前面に出されます。これは実際にしなやかさにも影響しますが、恐らくはブランドの価値観を伝えるための“印象づくり”としての意味合いが強いと推測しています。
それよりも面白いのは構造です。これも個人的には性能比較ではないと感じていますが、繊維の層を重ね合わせて特徴を作っている点です。
構造の違い
ケーシングが繊維を斜めに並べた層だということは分かって貰えたと思うのですが、これに別の層を交差するように並べることで更なる特徴を出すことができます。
図のように、別のケーシングを重ねることで全体的な骨格としての構造を強くし安定感を増していきます。
タイヤのスペック表示でTPIの数字が「TPI 120×3」や「TPI 360/3」などと言った書き方をされていることがあると思いますが、この2つの表記は同じ120TPIのケーシングを3層使っていることを意味しています。この時、高TPIのケーシングであればキメが細かいしなやかで快適性が増していき、低TPIであれば硬さが増していくため乗り味は固くなりつつも耐パンク性能は上がっていくという特徴がより明確になっていくということなんでしょう。
独自技術と設計思想
ということでケーシングについてざっと触れてきたものの結局ケーシングの違いってTPI以外はそんなにないの??というと実はここからが各メーカーの独自性のお話で、驚くような内容になっています。
先ほど、サイクルモード様のサイトから引用したタイヤの断面を見てみるとコンパウンドの内側に赤色のケーシングが見えるかと思います。これ、恐らく分かりにくくなるから画像には説明を書かなかったのかと思いますが、実はこの赤い部分が耐パンク用ベルト(プロテクションベルト)と言われる耐パンク用ケーシングなのです。
トレッドにもトレッド面とサイド面に違うコンパウンドを使って耐パンク性能やグリップ性能を高めたりするように、ケーシングも部分的にケーシングを当てて耐パンク性能を高めるといった技術が使われています。・・・凄すぎる。
勿論、耐パンク性能を高めるケーシングの配置は各社行っていてメーカーやラインアップ毎にそれぞれ特徴があります。
例えばコンチネンタルのGP5000は耐パンクベルトとして鉄の10倍もの強度を誇るケブラー繊維Vectranを使った『ベクトランブレーカー』を採用しているし、Vittoria CORSA PROを例にするとトレッド面の耐パンクは勿論のこと、ビード部分を囲うように『BEAD SHIELD』というサイドカット対策用のプロテクションが配置されています。
実はタイヤ選びの時にこれらの耐パンク技術の採用によってタイヤの設計思想がかなり見て取ることができます。
これもCONTINENTALのGRANPRIXシリーズを例に出してみると
引用:ミズタニ自転車株式会社 GRAN PRIX / GRAN PRIX5000 / GRAN PRIX 4-SEASON
左の無印GPを見ると、ブラックチリコンパウンドとトレッドパターンからGP5000のシリーズであることは分かりながらも、TPI数値は低めで耐パンク技術などは使われていないことが分かります。対して真ん中のGP5000はしっかりとトレッド部分にベクトランブレーカーが採用されていて走行時のパンク対策がされていることが見て取れます。そして右の「GP 4シーズン」、何とトレッド部分にはベクトランブレーカーを2層も配置!さらには赤い網目状のケーシング『デュラスキン』が全体を覆っていて広い範囲でサイドカット対策がされていることも確認できます。
TPIはGP5000同様の330TPI、ブラックチリコンパウンドの硬めの乗り味を高TPIで調整しながらも耐パンク性能を一段と上げてきたという設計なのだと推測できます。
4SEASONという名称から、どんな状況でも対応の万能型だろうと想像は付くものの、具体的なところがどうなってるかまでは名前だけでは想像することができませんでしたが、こうやって構造を把握すると他のタイヤよりも圧倒的に走行時のパンクトラブルの対策がされていることが分かります。
タイヤ選びのまとめ
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。冒頭でタイヤを見るチェックポイントをご紹介しましたが、振り返って見たいと思います。
チェックすべきポイント
- コンパウンド:主にグリップ力と寿命
- ケーシングとTPI:主に乗り味、耐パンク性能、転がり性能
- 独自技術:オプション的な付加価値とポジショニング。耐パンク性能やグリップなど独自の特徴付け
雨天時に走るかどうかにもよりますが、まずはコンパウンドを確認し求めるグリップに足りるかを見るのが良いと思います。評判の良いCONTINENTALのGP5000であればBlack Chili Cpmpoundを使っているので、同じコンパウンドを使っていればグリップは同等の性能を得られる・・・といった感じです。
同じことをミシュランでやってみます。最上位のPOWER CUPがGUM-Xというコンパウンドを使っていて、名前からして耐パンク性能を意識したであろうPOWER PROTECITONを見るとMagi-Xを採用しています。調べてみるとGUM-Xは転がり性能が高く、Magi-Xはグリップ力が高いということが見えてきます。他にもPro5を見るとGUM-Xですが、Lithion4を見るとMagi-Xというコンパウンドになっています。
それで言うとPOWER CUPとPro5はスピードを求めるレース寄りで、POWER PROTECITONやLithion4はグリップが求められるダウンヒルか、ウェット時などを想定して長時間ライドなどでも使いやすい印象だと分かると思います。
調べてみて改めて驚くのは、最上位モデルのGUM-Xが全てにおいて上かと思ったら、実はPOWER PROTECITONに使われているMagi-Xの方がグリップ力は上で、一見POWER CUPの方が消耗スピードは速いと思いきや、逆ということが見えてきます。
続いてケーシングとTPIですが、これは単純に乗り味を想像するのに役立ちます。POWER CUPやPro5は360TPIでとてもしなやかなことが分かります。POWER PROTECITONも同じく360TPIであることに対してLithion4は240TPIなのですが、POWER PROTECITONは120TPIx3という滑らかなケーシングを3枚重ねにしているのに対して、Lithion4は60TPIx4というやや強度が高そうなケーシングを4層重ねているため乗り味が硬めになりそうなのが想像できます。もともとグリップ力が高い柔らかいコンパウンドなので、少しくらいしなやかさが失われても問題はないでしょうが、おそらくこのいった差で多少の乗り心地を犠牲にしながらも耐パンク性能を高めつつ特にLithion4はコストダウンを実現しているのではないかと思います。
最後に独自技術です。POWER CUPはトレッド面にアラミドシールドというプロテクションが配置されていていますがサイドの対策は無く、スピードを求めるシリアスなレース向けなのだろうという想像がつきます。対するPro5は全面を囲うように耐パンクケーシングが配置され、更にはビード周りにも処理がされパンク対策はかなり処置が施されています。トレッドパターンはミシュランらしい控えめなデザインからPro5はスピードを求めながらも様々なリスクヘッジを考えた練習でもロングライドでも使えるオールラウンドモデルだということが分かります。
POWER PROTECITONは名前の通りですが、Pro5よりも更に1枚トレッド面にプロテクション処理がされトレッドのサイド面のデザインからも雨天も考えたような様々な状況に対応可能なモデルな設計思想が読み取れました。Lithion4はトレッド面とビード周りの処理で多く見られるパンク対策をしてあり、安価でも十分な体験が可能なハイコストパフォーマンスモデルといえると思います。
こんな風に考えてタイヤを購入し自分の求めていたフィーリングだったらきっと満足度も上がると思うんですよね~
ちょうど辻善光さんがミシュランのLithion4、POWER CUP、Pro5を題材に解説とレビューとしていたので、是非これらの情報も踏まえて見てもらえたら楽しいと思います。
最後に
ロードバイクを買ったらまずやりたいカスタマイズみたいなところで「良いタイヤを買う」みたいなことが必ず言われるような気がしています。
これだけ長々と書いておいてふざけた発言になってしまうのですが、素材がどうだとか軽さがどうだとかTPIがどうだとか言いながら、レースをしないユーザーにとって私は最終的にプラシーボ効果だと思ってますw
今使っているChallengeのタイヤはChallege STRADA PROもELITE XPもどちらも大満足で気にっていて、もう他に変える気が無いくらいです。
どこがそんなに良いのか?と言われたら、安心感や路面からの感触などでしかなく「フィーリング」としか言えないので結局はオカルトなのですが、フィーリングと言うのは結局カーブを曲がる時の信頼につながる部分なので非常に重要な訳です。
できれば特にロードバイクを始めたばかりの方には「良いタイヤ=高いタイヤ」ではなく、「安くても(フィーリングが合う)タイヤ」と出会ったり、幾つか使ってみて最終的に高いタイヤを履いて「(やっぱり高いタイヤは)フィーリングが合う」という実感をして「信頼あるタイヤ」に出会う楽しい体験をして貰いたいなと思ったりします。
それで言うと、私はまだ使ったことが無いですが、Lithion4は試して貰いたいですね。
Lithion2、Lithion3は、巷では「安価でグリップが利かない」みたいな評価だったと思いますが、ある程度はグリップするし減りも遅いし困ったら買っておけば良いみたいなタイヤでとても好きでお世話になりました。そんな着々と進化してきたLithionシリーズですが今回の4は明らかにコンセプトが変わってお値段据え置きながらにグリップ力を異次元に上げてきて(Magi-Xコンパウンド採用は驚き)相当良くなってると思うので、これが前後合わせても人気のタイヤ達の1本分よりも安くてお釣りがくるって凄いよなと思うんです。ホント信じられない。
今は本当にChallengeから変える気が無くなってしまったのですが、ここに至るまでも色んなタイヤを体験してみて自分に合うタイヤを見つけてこれた気がするので、この楽しい体験を共有したいなと思ってしまう訳でした。
終








