ロードバイクで腕が遠く感じる原因とスタックと前傾姿勢とポジションの関係について
ジオメトリからリーチを計算するスプレッドシートを作りました。使い方は下の方にあります。
Googleスプレッドシート:リーチの係数計算
CULEBROに乗り続けて2年。正直、「この自転車、何だか腕が遠くて乗りにくいよ!」と思っていたんですが、その原因が少し分かったような気がしたので記事にしたいと思います。
サイクルモード、ワイズロードのスポーツバイクデモと試乗しまくって、自転車によってポジションが大きく違ったり、良いけど何か違和感が・・・というような微妙に違う変化を感じたり、その違いが一体何なのかずっと考えていました。
そして、改めて試乗した自転車のジオメトリを眺めていたら、気付いたんです。スタックという項目に。・・・薄々、気づいては居たんです。面倒くさがらずに三角関数の計算をしなくちゃダメなんだってことを。
2018/05/03追記 リーチ計算表をバージョンアップしました。バージョンアップ版はこちら
CULEBROは腕が遠くに感じる・・・という不満
私の乗ってるFOCUS CULEBROですが、現状の私の理解としては「初心者向けではない」と言う事です。
ちなみに、CAYO ALはグローブライドの方に聞いたらカーボンと同じジオメトリとのことなので、たぶん色んな方が乗りやすいと思います。
合わない物に合わせるのがポジションを出すことなのか?
CULEBROに乗って約2年の間に、ステムを交換やらハンドル交換やらサドルの調整やら・・・なんだかとにかく色々とやってきました。しかし、ポジションがなかなか出ない。
私の乗っているCULEBROはサイズがSサイズで数字で言うと52になります。ただ、SHIMANOのフィッティングでも体型から算出されたサイズではMサイズなのですが、購入前にまたがってみた感じではMサイズはハンドルが遠く感じたため、Sサイズにしたという背景があります。
上半身を支えるのが体幹なのは勿論分かりますが、疲れている時は上半身を腕で支えることも多いと思います。その時、CULEBROに乗っていると上腕筋ではなく二の腕部分の筋肉を使って結構きつい体制になり、異常に疲労が溜まってしまうということが良くありました。
ブラケットが遠いのでどうしてもブラケットの手前1cm~2cmくらいを持つポジションになりがちと言う。むしろ下ハンの方が楽という。
ところが、FOCUS CAYOをはじめ、SPECIALIZED TARMACなど幾つかのバイクは試乗でそれこそハンドルに手を置いた瞬間に乗り味や路面追従性や振動吸収がどうこうよりも、自然に手を伸ばした位置にハンドルがあってとにかく上半身が楽!という感じがあったのです。
そもそもが違い過ぎて、CULEBROに色々セッティングを施しても確実にCAYOやTARMACのようにはならない。そもそも何かベースとなる物から違いすぎる・・・そんな確信がありました。
初心者は他に知らないからね。どういう感覚が普通かなんて分かんないんだよ
CULBEROはFOCUSというメーカーのネーミングも含めて気に入ったこともありました。そして、気に入った自転車には最初から愛着が湧いて乗る気になるので、機能性においては自転車に自分が合わせて行く、またはセッティングして乗れるようにしていく。確かにそんな風に思うところもあります。それがポジションを出す!ということだと思っていました。

・・・しかし、ポジションを出すというのは、ある程度当たり前に楽に乗れるプラスマイナス0の状態があり、更にそこから快適性や自分にあったプラスのセッティングに変えて行くことであって、自分がやってるのって腕が遠すぎて乗りにくいというマイナスの状態を何とかセッティングやパーツを交換してゼロにしていく行為なんじゃないか?と最近になって思うようになりました。
ポジションで参考にするのってジオメトリとヘッドパーツなんでしょ?
それじゃ、どうやってそういった自転車を見分けて行けば良いの?ってところですが、良く初心者向けでサイズについて調べると、トップチューブ長(ホリゾンタル換算)やヘッドチューブ長が話題に上がりますが、この数字に従ってもあまりしっくりこないことがありました。
手の位置が楽かどうかはリーチやヘッドパーツはあまりアテにならない
結論から言うとあまりヘッドパーツは関係ないのかなと思っています。
恐らく剛性や乗り味を出すのにヘッドパーツで調整をかけるということはしてるとは思いますが、ヘッドパーツが長くなったからと言って直接的にアップライトなポジションになるなどリーチには影響は少ないように思えます。
CAYO(Mサイズ 54)が最高に乗りやすい訳で、きっとCULEBROのリーチはCAYOより長いんだろう!と思ってジオメトリでリーチを比較して見てみると、CULEBRO Sサイズ383mmに対してCAYO Mサイズは390mmとなってCAYOの方がリーチが長いという。なのになぜCAYOの方が手が近く感じるのか。
それじゃ、ヘッドチューブかな?って確かにヘッドチューブはCULEBRO120mmに対してCAYOは145mmで25mmも長い。だったらスペーサーかましてハンドルを上げれば、ほらCAYOみたいな快適なポジションに・・・って全然ならないんです。ステムを上にしてもハンドルは遠いまま。
リーチはBBを基準にジオメトリから三角関数で見つける
多分、ハンドルが遠くてどうしてだろう?って不思議に思って、「ジオメトリのリーチを見れば良いんだな?」って思ってる人はそうじゃないってことを薄々気づいているんだと思います。
リーチは肩からハンドルに斜めに繋がる腕のリーチなんだ
ヘッドパーツのトップから水平方向に直線を引いてBBの真上までの距離がリーチというのは少し違和感ありますよね?
1cm近くなるだけでだいぶ違うので落差を無視するのは少し違和感ありますし。
そして、サドルの高さが高くなればハンドルへの距離も遠くなるし、ヘッドパーツが長くてもそもそもヘッドパーツが低い位置に付いていれば、ハンドルは遠くなるということに気付いているんじゃないでしょうか。
ハンドル落差、リーチ、スタック、サドル高から係数を割り出す
実際に自転車に乗ってみて、腕からハンドルまでの距離を出すには乗車の姿勢によって前後が変わってきてしまうため、ここでは変わらない3つの数値を使ってリーチの代わりに算出した係数で考えると、ジオメトリの違いが分かってきます。下の図で言うHがその係数になります。
自分が乗りやすい1台を試乗なりで探しだし、ジオメトリからHの値を算出。これを自分が乗りやすいリーチの係数として考えます。
他の自転車のリーチが自分に合うかどうかは、メーカーサイトなどで公表されているジオメトリから算出し、Hの値が近ければ近いほど他のロードバイクでもリーチは問題無い目安に使うことが出来るのではないかという考え方です。
算出方法として、必要なのは以下の値
C:Seat Tube Angle(シートチューブアングル) → メーカーのジオメトリを参照
D:Stack(スタック) → メーカーのジオメトリを参照
F:Reach(リーチ) → メーカーのジオメトリを参照
E:サドル高 → BBからシートチューブ沿いにはかりサドルの上辺までの距離。股下を計ってから算出でもOK
最終的に、三角関数を使ってBの値を算出、B-DでAを出し、Hを算出する流れです。
・・・考え方、あってるよね??
まぁ実際ジオメトリを見るのに「スタック」っていう概念が無かったんですが、気付いてすぐググったら、サーベロがフィッティングに「リーチとスタックを使ってる」と見つかるくらいで、ちょっとしたことで心理にたどり着けないところが自転車の難しいところだなぁと思ったりしました。
なぜBBを基準に考えるのか
この記事、一瞬公開したんですが、その際に「サドルの位置からの方が良いんじゃないの?」という意見を貰いました。ありがとうございます。
で、「確かにその通りだわ!」と思って全部サドルの位置で計算をし直しました。が、出た値とハンドルが遠く感じるという感覚に相関性が無いように感じました。
・・・で、もう一度考えてみたんですが、サドルの前後位置ってペダルの位置と膝の位置に合わせて動かしますよね?
要するにクランク(BB)に合わせて動かしているのってことなので、となるとやはり基準となるのはBBなのかという結論になりました。
一応、サドルからヘッドまでの距離の計算は上図のようにやっています。
Google スプレッドシート リーチ係数計算表を作りました
自分のサドル高(股下*0.885)と、メーカーのジオメトリがあれば簡単に計算できる計算表をGoogleスプレッドシートで作りました。
良かったらURLにアクセスして、メニューの「ファイル」からダウンロードして保存するなりコピーするなりして使ってみてください。
Googleスプレッドシート:リーチの係数計算
2018/05/03追記 リーチ計算表をバージョンアップしました。バージョンアップ版はこちら
使い方
必ず半角数字で入力してください!
- コピーをしないと編集ができないので、「ファイル」からダウンロードするなり、コピーするなりして自分のところに複製して編集が出来る状態にします。
- まず右上にある「K2」に自分のサドル高を入力します。サドル高が分からない人は「むねさだブログ」←こちらをご覧ください。股下を計って0.885をかければサドル高が出ます。
- その次に自分の合っていると思う自転車のジオメトリからReach、Stack、Seat Tube Angleを入力します。
- 係数の列が自動で計算されるので、この係数の数字を右上のN2に「BBを軸にした理想の係数」に値をコピーか手打ちで入力します。
- 左の方のメーカーや車種、サイズは書かなくても問題無いですが、「車種」と「サイズ」くらいは書いておくと比較する時に役立ちます。
便利な使い方
スプレッドシートの中にある「入力サンプル」というシートがあります。これはあらかじめ私が幾つかデータを入れたものですが、右上の「BBを軸にした理想の係数」にはFOCUS CAYO Mサイズの係数が入っている状態です。
この数値が入った状態で複数の車種のジオメトリを入れていくと、「理想の係数」から他の車種との「誤差」が計算されます。誤差が-の場合はハンドルが近く、+であれば遠いということが一目で分かり、この誤差の数値が大きいほど自分にとっては乗りにくい数字になります。
更にN4の「誤差」の右側にあるフィルターをクリックして「A→Zで並べ替え」を選ぶと数字を昇順に並べてくれるので、理想の車種から遠くに表示されている物ほど自分に合わない車種ということが視覚的にも分かります。
他はEXCEL使ってる人なら分かると思うので・・・
係数とハンドル落差を見る
係数だけが理想の数値に近くても、それだけで好みに合うかというと、もう1つ「落差」が結構重要だと思います。
入力サンプルで「FOCUS CULEBRO」のMサイズとSサイズを比較してみると、誤差は殆ど無いのでどちらでも良いかと思いきや、「ハンドル落差」を見るとかなり違います。
・・・これ、一応考えがあっているのであれば、そのまま落差のことを指しています。なので、「落差が出てねぇな、かっこわりい」とか言う人はそもそも自転車のことを分かってないのかもなぁということになりかねないですかね。
要するにリーチだけ気にするのであれば、私はCULEBROならMサイズでもSサイズでも問題無かったことになります。Sサイズは剛性が高く乗り味が固く、Mサイズは乗り心地が良いなんていう細かい違いはあるとは思いますが、見た目はSサイズの方が何もしなくても落差が出るという、見栄を張りやすい状況を意図的に作れるのかもしれません。
・・・逆に言うと、落差が出てる人はワンサイズ下のフレームに乗ってる可能性もあるのかも?w
試乗した自転車をだいたい一覧化してみた
入力サンプルは試乗した自転車と、レディースの参考に幾つか入力したものになります。
そういう意味では、CANNONDALE SUPER SIX EVO、SYNAPSE、TERK DOMANE、NEILPRYDE NAZARE1、ラピエール ゼリウスなど、乗りやすいなぁと思った車種はだいたいCULEBROよりリーチの係数が短かったことが分かりました。
正直なところ、FOCUS PARALANEはマウンテンバイクに乗っているような印象で、これならマウンテンバイクにして山道方向に振り切った方が良いかな?と思ったりしたんですが、実際に数字にしてみると非常に分かりやすかったです。
FOCUS CULEBROが初心者向けじゃないと思う理由とFOCUSというメーカー
数字化するとホント分かりやすいと思ったんですが、リーチの係数で見るとSUPERSIX EVOよりも、ハンドルが遠く落差も大きいということになります。実際にCAYOよりも、IZALCOに近いポジションになるみたい。
むしろ、数値的にはスペシャのTTバイクに近いくらいなので、これは長距離を走るロングライドモデルではなく明らかにレース向けのジオメトリなんじゃないかと仮説が湧きます。
そしてCAYOに試乗した際に思ったのは、CAYOですら他メーカーに比べると前傾姿勢な気がする・・と思ったら、入力サンプルの中ではスペシャのTTバイクとCANYON Aeroadを除くリーチが長い方をFOCUSが占める状況に。
全く的はずれな記事かも知れませんが、FOCUSは前傾姿勢が深いメーカーなのかも知れないですね。
または、リーチは長いのにシートチューブ角は普通なので手が遠く感じるのかも?
ジオメトリの謎は深まるばかり
今回はリーチに着目して色々と考えてみて、答えが出たかどうかは別にして考察は進んだ気がしました。
それでもCANYON Aeroadみたいに、凄く乗りやすかったのにリーチの係数で言うと非常に遠いという謎な車種もあります。
恐らく、リーチとスタックだけでは語れないジオメトリの奥深さがあるんだと思います。今回は後ろ三角の話なんか全くしてないですし。
あ~、次に何か気付くのはいつの事なのか。また、気づいた時は今回のこの考察が完全に的外れな物だと分かったりするかもしれません・・・
ジオメトリの謎、もっともっと理解を深めていきたいですね。
終