サドルの形状の違いと選び方(主観)
自転車乗りの多くの人がはまる悩み・・・お尻が痛い問題。
色んなサドルを試してみてもなかなかしっくりするサドルに出会わず、いつの間にかサドルの数が2桁を超えてしまった。
このような状況からなかなか抜け出すことができないことを自転車界隈では「サドル沼」と読んだりします。
そして私もサドル沼にどっぷりはまって、既に3年ほど。数えるサドルは10を超えた経験からサドルの種類についてそれなりに学んできたので、サドルを見る時のチェックポイントと私が考えるサドルの選び方をご紹介します。
サドルのチェックポイントは6つ
結論から先に言うと、私は経験から超主観的ですがサドル選びには6つのポイントがあることを発見しました。
それが以下の6つです。
- 形状(ウェーブorフラット)
- 座面形状(ラウンドorフラット)
- 坐骨幅
- クッション
- ノーズの長さ
- 穴あきor溝あり
このポイントによって明確にどういう人に合っているかを切り分けられないと思いますが、サドル沼にハマった場合、この一つ一つを見極めていくことである程度、自分にあったサドルを導き出していくことはできるんじゃないかと思っています。
1.形状(ウェーブorフラット)
サドルを横から見た時の形状です。
サドルの形状が先端から後端まで平ら(フラット)か、後方にかけて反り上がっている(ウェーブ)かの種類があります。
フラットは走っている時の斜度や疲労具合によって着座位置を変えやすいと言われています。
一方でウェーブは着座位置が一定で疲労具合によっても腰が固定されるのでフォームが乱れにくいようなことを言われています。
とは言え、私としては骨盤の傾きと筋肉量の方が影響があると思うので、あまり着座位置は気にしない方が良いかと思っています。
この形状について詳しくは↓フィジーク アリアンテの記事をご覧ください。
2.座面形状(ラウンドorフラット)
サドルを前後から見て、左右に向けて形状が湾曲しているか平らかの違いがあります。
ペダリングのしやすさなどにも影響するようですが、ここも私は骨盤の傾きに関係している可能性があると考えています。
私は殿筋の筋肉量が少なく体重もあるのであくまで仮説ですが、骨盤が立っている場合は殿筋の太い部分がサドルに設置していて体重を支えるため座面はフラットが適していて、逆に骨盤が前に傾いている場合は殿筋から足の付け根にかけて筋肉が薄い部分が接地面になるため、体重を支えるのには不十分で接地面を広くし圧力を分散させるためにラウンド形状が適しているのでは?と考えています。
また、坐骨幅から座面幅を選ぶことがあると思いますが、フィジークはフラットタイプは幅が狭め、ラウンドタイプは幅が広めに作っていて座面幅についてはメーカーによって傾向が違います。
坐骨幅+〇〇mmなどと一律に考えず、メーカーごとに違いがある点にも気を付けておいた方が良いかと思います。
出典:(c)Kawashima Cycle Supply Co.,ltd. http://www.riogrande.co.jp/news/node/46414
そして見落としがちなのですが、テールだけではなく、シェイプされている部分に関してもラウンドかフラットかという形状の違いがあります。
テールはラウンドでもこのシェイプ部分がフラットなタイプが大半なのできちんと見極めておくことが必要です。
3.坐骨幅
サドルを選ぶ時に必ず坐骨幅の話になります。そして坐骨幅にあったサイズを選ぶのですが、坐骨幅に適したサドルを選んだところで痛い人は痛いです。
これは先の1と2にも影響するところですが、体重と脚力(出力)にも強い関係があります。
良くサドルにドカッと座るのではなく、ハンドルとペダルにも荷重できていればお尻は痛くならないと言われており、これはまさにその通りなのですがその目安となるものが無かったため結局は解決方法が分からないという人が多かったかと思います。
しかし、フィジークのスパインコンセプトはその目安を提示していました。
この表では左側の体重と上の出力(時速の目安)の交わる枠が青い枠の場合はサドル幅が広いLargeサイズを推奨し、白い枠なら通常幅を推奨するという考え方になっています。
最初の60kmくらいは全然痛くないのに、途中から痛くなるという場合は疲労で出力が落ちて痛くなってる可能性があると思うので、その場合は座面幅が広いラージサイズを試してみる価値はあるかもしれません。
4.クッション
良く「合うサドルにはクッションは関係ない」などと聞きますが、やっぱりクッションの厚みがあったり特殊素材を使ってクッション性を出しているサドルは快適です。
レーパンは履くのにクッションは否定するというのは少し理解し難いですよね。
ですので、一方的にクッションを否定するのではなく、形がある程度合うサドルを見つけたら残りの微調整にはクッションの厚みで調整するというのは良い選択だと思います。
サドルの形状が合わなくても極厚クッションであれば解決されることもかなり多いはずです。
ただし、クッションの厚みが増えるとサドルの高さを厚みの分下げるといったセッティングをし直す必要があるので注意が必要です。
サドルを変える度に高さ調整は必要ですが、クッションは特に影響が出やすいので覚えておいた方が良いです。
私はSMPのHELLから同形状でクッションが厚いHybridに変えてテストしたときに、セッティングを変えなかったせいでお尻にミミズ腫れを作りました。
5.ノーズの長さ
最近はショートノーズという先端が短いサドルが流行っています。これはサドルの前の方に座る「前乗り」に適したサドルでTTのような前ノリポジションになりやすいエアロタイプの自転車にも向いています。
そして股間の圧迫にも実は非常に効果があります。サンマルコのショートフィットCを使った時はあまりの圧迫の無さに「遂にサドル沼から抜け出たか!」と勘違いした程でした。(結果は圧迫は無かったが別の個所が合わずに使えなかった)
股間の痺れが本当になくなります。・・・ただし、ハンドルに体重が乗りやすくなるので操作性が悪くなります。
操作性に関しては体験して初めて分かることですが、低速時にふらついたりしますので理解して使用することが大事です。
6.穴あきor溝あり
最後は穴あきや溝です。会陰部と言われる要するに股間ですがこの圧迫を軽減するものです。・・・とは言え、個人的には痺れにはあまり効果が無いのではないかと思っています。
勿論穴あきや溝ありで解決する人も居るとは思いますが、個人的には座った瞬間に刺すような痛みが出る人向けの物だと思っています。
この刺すような痛みは私が経験したものだと座った瞬間に分かり10秒と座って居られないものなので、溝などはこの手の痛みへの対策なのだと思います。
逆に穴あきや溝ありは尻との接地面が少なくなるため、実はクッション性が低くなるという弊害が生まれます。
ですので、刺すような痛みが無いのなら思いきって穴無し溝無しのサドルを試してみるのが良いかと思います。
サドルの選び方
チェックポイントを見終わったところで、あくまで私の経験則での超主観ですが、選び方を紹介します。
- 坐骨幅を測り骨盤が一般基準から逸脱して無いかを知る
- SPINE CONCEPTアプリで坐骨の傾き度合いを知り形状を決める
- 骨盤の傾きと筋肉量から座面の形状を決める
- 座面の幅を選ぶ
- クッションと見た目で選択
1.坐骨幅を測り骨盤が一般基準から逸脱して無いかを知る
フィジークやスペシャライズドなど、自転車店では坐骨幅を測るツールを用意しているところがあります。そこに行って坐骨幅を測るのが良いですが、無い場合は段ボールなどで測ることもできるのですが非常に難しいです。(動画参考)
ただ、基本的には身長が高いという場合以外は、通常のサイズで問題無いと思います。
私はスーツを作りに行くと、採寸の時に3回に1回くらいは骨盤がパンツのサイズに合わないと言われるくらい大きいのですが、そんな私でもスペシャの測定器で測ってもらった坐骨幅は一般的と言われている110mmでした。
女性は骨盤の形が男性と違うのでサドルに当たる部分はだいたい130mm前後だそうです。
2.SPINE CONCEPTアプリで坐骨の傾き度合いを知り形状を決める
サドル横から見た形状の候補を上げるため骨盤の傾きを調べます。
自分で骨盤を倒しているか立てているか自覚があれば良いんですが、無ければフィジークのSPINE CONCEPTで骨盤角度を検討してみるのが良いと思います。
フィジークの提唱するフィッティング理論「スパインコンセプト」が、身体の柔軟性に体重やパワーも加味して「スパインコンセプトEVO」として進化しました。(2018/1/18更新) | RIOGRANDE
本当はアプリを使うのが良いかと思うんですが、2019/03/21時点でアプリは削除されてました・・・
ちなみに、体の柔軟性や前傾の深さではなく骨盤角度で見る例としては、フィジークのサドルで後方が反っているアリアンテを愛用するリッチー・ポートは骨盤が前傾しているように見えます。
対してフラットなアリオネを使用するロマン・バルデは脊柱が曲がり骨盤が立っているのが分かります。
フィジークはSpine Conceptという概念を提唱していて、身体の前屈の深さではなく骨盤の傾きに着目しています。
骨盤が前に倒れていたらウェーブ、起き上がっていたらフラットと言う概念です。
サドルのコンセプトはメーカーごとに必ずしも一致はしないですが、お馴染みのfabricなども前傾姿勢で形状が変わってくる設計をしており、横からの形状でFlatはフラット、Radiusはウェーブ、shallowは中間となる形状となっています。
出典:fabric 公式サイト(https://fabric.cc/ja/)
この時、前傾姿勢ではなく骨盤の傾きに目を向けてみると、意外に前傾姿勢の浅いRadiusの方が深いShallowよりも骨盤は前に倒れていて、座面がフラットなものほど上半身の倒れ具合に対して骨盤が立っているように見えます。
もし柔軟性ではなく骨盤の傾きが横から見た形状に関係しているとすれば、この考え方はある程度の応用がきくと思います。
3.骨盤の傾きと筋肉量から座面の形状を決める
今度は前後にサドルを見た時の座面形状を選びます。骨盤が立っていたら座面はフラットが良いかと思います。骨盤が倒れていたらラウンドです。
しかし、座面の形状に関してはシェイプ部分の形状が重要なため、実際にどちらが適しているかを試してみる以外に無いかと思います。
ここに関しては、骨盤の傾きは本来「大中小」と言ったように明確に分けられるものではないので、横から見たウェーブ形状と、前後から見たラウンド形状のどちらを優先するかはどちらを優先するかです。
坐骨が完全に立っているなら横から見た形状もフラットで座面もフラットかもしれませんが、やや前傾であればショートフィットCのように横からはウェーブ、座面後端はラウンド、シェイプ部はフラットが良いかもしれません。骨盤が前傾なら、アリアンテのように横からはウェーブで、座面もシェイプ部もラウンドを選ぶというような感じかと思います。
4.座面の幅を選ぶ
座面幅はSPINE CONCEPTの表を目安にレギュラーかラージを選ぶのが良いかと思います。坐骨幅はあまり大きな差は出にくいようなので、どちらかと言うと体重と出力を気にする方が良いと思います。
トレーニングをしていて出力が高めであればレギュラー、出力は普通だけど体重は軽めであればレギュラー、出力は低く体重も重ければラージという選び方もあるかと思います。
5.クッションと見た目で選択
1~4までの手順をすべてうやむやにできるのがクッションです。私は今のサドルに行く前はSelle RoyalのScientiaというサドルを使っていました。クッションが激盛りで形状など一切無視してくれるとんでもないサドルでした。
重量はあるのですが、見た目も意外に悪くないので、見た目や人によっては重量を気にしつつ、問題無いならクッション性の高いものを選んで調整が良いかと思います。
おすすめサドル
今回の私の主観的な選び方をメジャーなサドルメーカーに適用してみました。
fabricを例に私の超主観を鵜呑みにして選んでみるなら
骨盤が立っている人向け
骨盤が前に倒れている人向け
上記に当てはまらない人
骨盤が倒れているけどクッション性がもっと欲しい、または出力が低く体重がある人
ショートノーズサドル
実際に使っていないのと、使ったけど合わなかったものたちが殆どですが、前傾姿勢時に圧迫感が気になるのでショートサドルに手を出したい人向けに。実物をかなりジロジロ見たり触ったりした感触でのレビューです。
骨盤は倒れていないし、立っても居ない中間だと思ってる人(4種)
骨盤が前傾していると思っている人(2種)
クッション性能に寄るならSelle Royal
とりあえずはこれから手を出したら良さそうなオールマイティなクッション性
坐骨幅だけは測る必要がありますが、Selle Royal Sientia
まとめ
サドル沼はハマる人はハマります。
評判を聞いて次から次へと手を出していけばいつかは解決するかも知れませんが、サドルのタイプも同じように見えて色々あり、またメーカーのコンセプトを全て説明することができないため特徴的な部分のみが端的に広まり細かい部分の違いが見えにくくなっているのではないかと思います。
一つずつサドルを良く見比べてタイプを分類し、自分に合う物を探していくのが良いのではないかと私は思います。
終